バマコの朝

アフリカを旅する、あるいはアフリカに滞在する人にはいくつか種類がある。

旅自体が目的で、いくつもの国々を旅するバックパッカー。
政府関係機関や、開発援助・人道援助など公益分野の仕事で関わる人。
現地の産業や貿易などビジネスで関わる人。
現地の人と縁を結び、家族として暮らす人。
文化や芸術、学問の研究のフィールドワークをする人。

私はそれらのどれでもない形で、一年間だけ、マリ共和国の首都バマコに滞在した。2004年1月から2005年1月にかけてのことだ。

なんの義務もない、目的すらも曖昧な滞在は、私の心身をこの上なく緩ませた。その緩さの記憶がいまだに私から離れない。

もっとも忘れられないのが、あの朝の空気だ。
静かでまだ幾分涼しく、でもこれからやってくる暑さの予感を含んだ空気。鳥の声。誰かのラジオから聞こえてくる音楽。

もう二度と戻ってこないし、もう一度新たに体験することもできないだろうあの日々について、少し書いておきたくなった。書けることがあるのかどうかもわからないけれど。

2023年2月

西アフリカの朝 管理人 シエル